
‘いけばな‘とは何か?
最近よく自問自答してしまうテーマです。
日本の風土、とりわけ日本列島の西南部を中心として発展してをしてきた、わが国の文化の基調にある「照葉樹林文化」を‘いけばな‘と結びつける学者の方がいらっしゃいます。
照葉樹というのは、シイ、タブノキ、よく知っているものとしてはヤブツバキのように、艶やかな厚みのある葉を持った常緑樹のことで、こうした照葉樹の多い植物生態に恵まれていたのが、我が国の原植生であり、日本文化は、こうした風土の中でその基層となるものが醸成をされてきたものだと考えました。
木の種類はやや違ってはいますが、この同じ照葉樹の仲間である樹林に恵まれた植物生態を持っているのは、ヒマラヤ山脈一帯からベトナム、タイの山岳部、そして中国南部から台湾の一部、沖縄から日本列島の西南部までの地域であると言われています。
この照葉樹林にかつて住んでいた民族の間には、その基調に共通する文化様相があるのだと考えられています。たとえば、中国・雲南省の西双版納地方に住む少数民族の人達の生活な中には、民族学的にも日本人たちと共通をする習俗が見受けられると言われています。
照葉樹林という植物生態は、常緑樹に恵まれ、照葉樹の特性としての木の形から、こんもりとした森が多く、今では古い神社の森などにその姿が残されています。日本の照葉樹林帯には、常緑樹の多い中に、秋に美しく色づくカエデをはじめとする落葉樹が混在しています。もちろん、日本列島の東北部はブナやミズナラなどの多い落葉樹林帯ですが、海岸に近いところには、やはり照葉樹林を見受けることができます。日本の文化が醸成をされた西南日本は、こうした照葉樹林に恵まれていました。
西洋の風土はそれに対して、落葉樹林帯であったと一般に言われていますが、こうした自然の植生の全く違った風土の中で育った文化は、また異なった様相を示しているのは当然のことです。
こうした風土を持っていた日本人は、自然の植物に対して独特な心情を抱き、依代という考え方を持つようになりました。それは、一種のアニミズムという自然の造形物、山や大きな石や樹木などに、神の存在を見ようとする素朴な信仰なのですが、こうした依代観を持っていたことが、日本の‘いけばな‘の発生に大きな影響を与えました。今でも、神社などにある御神木であるとか、玉串に使われるサカキの枝、そして門松など、その源流を訪ねると、この依代観という考え方がその基盤になっていることがわかります。
つまるところ、‘いけばな‘とはアニミズムの象徴であると言えます。
そこに神を映し出すのか、又は自己を映し出すかはあなた次第なのです。
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